アレ屋

バイクで登山口まで

登山靴の手入れ

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長く使えるオールシーズン用の登山靴が欲しくなり、中山製靴(なかやませいか)さんに登山靴を作って頂きました。

新品の革靴(ヌバック)なので、備忘録を兼ねて、防水加工を行う手順をまとめてみました。

目次

初期状態

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赤のヌバックレザーにイエローの靴紐が映えます。触ると毛が立っているのが分かります。

インソールはありません。一般的な登山靴はインソールを収納するために中が平らになっていますが、この靴はアーチ状に隆起しています。

 

手入れ道具

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今回はヌバックレザー用ということで以下の道具を使いました。

 

レザージェル - コロニル|Collonil.jp

ワックス前に革の内部というか表面を水や汚れから保護するために使います。

 

アクティブ レザーワックス - コロニル|Collonil.jp

防水ワックスです。乾かして磨くとピカピカになります。低温環境でも凍結しない(-15度でテストとのこと)ので使っています。中山製靴さんでは、届いたらこれだけでいいから1本使い切るまで塗り込むようにと言われました。

 

防水ナノクリーム - コロニル

ワックス仕上げでも十分なのですが、ちょいと一手間、汚れやさらなる防水処理として、クリームを塗り込みます。ニクワックスのウォータープルーフワックスで仕上げることもありますが今回はコロニルのを使いました。

 

馬毛ブラシ - コロニル|Collonil.jp

レザージェルやワックスを塗った後に均一に伸ばすために使います。細かい部分をペネトレイトブラシで塗るのもおすすめです。後は基本的には指を使います。

 

手入れ工程

流れとしてはこんな感じ。今回は新品なので2からの工程です。

1. 山行後の汚れを水や専用洗剤で汚れを落とす

2. レザージェルを塗り込んで乾燥させる(3回)

3. レザーワックスを塗り込んで乾燥させて表面を磨く(3回)

4. 防水ナノクリームを塗って乾燥させて表面を磨く

 

下塗り1回目(防水レザージェル)

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靴紐は外しておきます。それから水でびしょびしょに濡らします。霧吹きで濡らしましたが、すぐ乾くのでシャワー等で思い切り濡らすのもいいと思います。とにかくびしょびしょに濡らします。

写真はDカンが内側を向いていますが、ジェルを塗り込むときは向きを調整して下さい。

 

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右は1度満遍なくレザージェルを塗った状態。塗りムラが出来ないよう少量のジェルを人差し指に塗り付け、薄く伸ばし、ブラッシングして伸ばします。

金具周りはペネトレイトブラシやウエスを使うと塗りやすいです。左は比較用に霧吹きしただけのものを置いていたのですが、乾いてしまいました。


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両方ともレザージェルを塗った状態。室温が30度を超えていたため、すぐに乾いていました。あとは乾くまで直射日光の当たらない風通しの良い場所で1日放置します。


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爪先部分の拡大。縫い糸は松脂を塗ってあるので、ワックスを塗ると糸が緩む事があるため塗りません。ブラッシングで多少被る分には許容範囲ということで。

 

下塗り2回目(防水レザージェル)

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1回目を塗り終えて乾燥させた状態。

ここからまた表面を水で濡らしてレザージェルを塗り込んでいきます。

 

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2回目を塗り終えた状態。

表面が多少、水を弾くようになってきました。縁にジェルが残ってしまっていますが、こうならないよう爪で掬ったりして伸ばします。また1日乾燥させます。

 

下塗り3回目(防水レザージェル)

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塗ってちょっと時間が経ってしまった写真です。そこそこ撥水するようになっています。1日乾燥させます。

 

ワックス塗り(1回目)

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いよいよワックスを塗り込みます。表面を水でこれでもかと濡らし、少量のワックスを手の平につけ、体温と摩擦熱で塗り込みます。

この工程では、サッと全体に塗り、その後何度か重ね塗りします。ムラが出来ないように表面はブラシで伸ばします。金具周りは指やペネトレイトブラシで塗り込みます。ワックスの量は計3回の工程で1本のワックスを使い切るくらいです。 

塗り終えたら軽くブラッシングし、直射日光の当たらない風通しの良い場所で2,3日乾かし、手で磨いて別の乾燥したブラシでブラッシングします。

 

ワックス塗り(2回目)

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2回目を塗り終えた状態。

深みのある色に落ち着いています。作業前に水で濡らすと、かなり撥水するようになっています。1回目と同じく、塗り終えた後に軽くブラッシングし、2、3日乾燥させたら手で磨き、乾いたブラシでブラッシングします。

 

ワックス塗り(3回目) 

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3回目を塗り終えた状態です。

まだ磨いていませんが、艶が出るようになりました。ここまでになると、ヌバックの毛羽立ち感はなくなり、すべすべした肌触りになります。

2、3日乾燥させたあと、表面を磨いて完成としてもOKです。ホースやシャワーで水をかけるときちんと撥水するのが分かります。

 

ワックス後の磨き

1〜3回目も乾燥してからブラッシングしていましたが、手の平で摩擦熱が発生するようにこすっていくと、だんだん光沢が出るようになります。これを革全体に行います。

ポリッシングクロスで磨くのも良いですが、あまり力を入れ過ぎると繊維クズが出たり、乾燥しきれていないワックスが剥がれるので注意です。

 

仕上げ防水処理(防水ナノクリーム)

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さらなる防水処理と汚れ対策を狙っての仕上げです。薄く塗り、乾燥させ、磨きます。ナノクリームは1回塗りでOKです。

 

仕上がり

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艶も出て、色は落ち着いた深みのある色に変わりました。

靴紐を通す場合、1週間ほど乾燥させてワックスの定着を待ちます。そうしないと、靴紐を締めたときにワックスが剥がれ落ちます。

手入れ方法はここまでです。

 

中山製靴さんでのオーダー方法

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今回、私が注文したのは1000DXです。

靴下を持参して直接、店舗兼工場へ伺いました。

元々、私の足は左右で長さが違っており、下りのときに足首が痛くなる事が多く、市販の靴では大きいサイズに合わせていました。今回は足の大きさに合わせて作ってもらおうと思い、伺いました。

オーソドックスな(?)コピー用紙に鉛筆で足型を取って頂き、測ると左右で3分(約9mm)違うとのこと。

他にもいくつか試し履きし、左右同じサイズでも問題無さそうでしたが、より快適さを求め、左右別サイズでお願いしました。

※オーダー代が別途かかりました

具体的な事は下記サイトで丁寧に解説されています。

yamahack.com

 

靴紐の結び方

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Dカンの外側から通し、足の甲はほどほどに、足首からは締め上げ・・・という基本的なものなのですが、いざ結んでみたら職人さんにまだ締まっていないとダメ出しされました。

失礼な話、おじいちゃんの手で締め上げたものが、私よりキツくしっかりとフィットするのです。

コツを聞くと、靴紐を左右水平にしっかり引き、テンションを維持したまま金具にかけるそうです。

同じようなことを意識していたのですが、特に左右水平にしっかり力を入れて引っ張るのはあまり出来ていませんでした。私の場合、タンが端に寄ってしまうことがあったので、中央にくるよう気をつけて力を入れます。

上から1番目、3番目の金具は1度上から通した後、下からもう1度通して2重に通しています。しっかり締まっていますが痛くなく、程よい圧迫感があります。

結び方は色々あると思いますが、私はイアンノットまたはイアンセキュアノットを使っています。

 

履き心地

軽い。靴を履いてないみたいに足が上がります。重さは片足約1.1kg(右1,156g, 左1,119g)もあるのに重さを感じさせません。アウトソールは固めです。

靴紐はかなりキツめに結んでいますが、各部締め付けは感じません。足首への負担もありません。

歩くと自然と太ももが上がるため、フォアフットないし、フラットフッティングで歩く感じになります。

余談ですが、私は普段履きにルナサンダルを着用し、日頃からベアフットランニングを行っています。人それぞれなのですが、私の場合、フォアフットやフラットフッティングの方が合っているようです。

 

所感 

早くこの靴を履いて山に行きたい…

あと、この靴用のアイゼンはまだ手に入れていないのですが、専用のコバがないためベルトタイプになると思います。